物性研究所短期研究会「物性化学のフロンティア2007」
開催日時:2007年11月20日(火曜日)〜11月22日(木曜日)
(2007 Novmber 4更新)
本研究会の趣旨
今年設立50年を迎えた物性研究所は,固体物理学に軸足を置く全国共同利用研究所として理論と実験の両面から物性研究を推進してきた.物性研の英語名が当初は「Institute for Solid State and Chemical Physics 」になるはずであったが,最終的に「Institute for Solid State Physics」になったことはあまり知られていない.しかし,設立当初から化学系の研究室をいくつか擁し,無機物性,有機物性,表面物性などの分野で世界的に見てもユニークな成果を生んできた.これらは,物性物理学との緊密な相互作用(コラボレーション)の結果でもある.
本短期研究会は,物性物理とのコラボレーションが可能な領域を抽出し,新たな「物質科学」を創出するためのるつぼとなるシンポジウムをめざす.今回の研究会の内容としては,「光と物質のインタープレイ」「ナノスケール・低次元物質と物性」「アモルファス・液体におけるダイナミクス」「エキゾティックな物質の合成と物性」「ソフトマターにおける自己組織化」「新材料開発と応用」のセッションを予定している.また,若手研究者のためのポスターセッションも計画している.従来の領域にとらわれず異分野間の討論・意見交換ができ,新しい分野の構築につながるような短期研究会としたい.
短期研究会提案者:
松本吉泰(京都大学大学院理学研究科 教授),川合真紀(東京大学大学院新領域 教授),佐藤直樹(京都大学化学研究所 教授),大門寛(奈良先端大学院大学 教授)
上田寛,辛埴,末元徹,柴山充弘,廣井善二,田島裕之,森初果,山室修,杉野修(以上,物性研所員) 提案者代表=吉信淳(物性研)
プログラム
11月20日(火曜)
13:00 はじめに 世話人
セッション1: アモルファス・液体におけるダイナミクス(座長:吉信淳)
13:10 分子液体とイオン液体のガラス転移 山室修(東大物性研)
13:30 イオン液体:この不思議なもの 浜口宏夫(東大院理)
14:00 一成分単純液体のガラス化 小田垣孝(九大院理)
14:30 水の電子状態と平均局所構造モデル 原田慈久(東大院工,SP8)
15:00 白金/水溶液界面の構造と反応性 杉野修(東大物性研)
15:20 アモルファス及び液体Siにおけるポリアモルフィズムの解明に向けて−第一原理分子動力学計算による取り組み− 森下徹也(産総研)
15:50 休憩
セッション2: 新材料開発と応用(座長:柴山充弘)
16:00 コンビナトリアル固体化学 川崎雅司(東北大金研)
16:30 有機単結晶トランジスタの高移動度キャリア伝導 竹谷純一(阪大院理)
17:00 生命科学時代が求める新材料−ソフト&ウェットマテリアルの創製 龔 剣萍(北大院理)
17:30 可視光応答性エネルギー変換型光触媒材料の開発 堂免一成(東大院工)
18:00 懇親会(柏キャンパスカフェテリア)
〜20:00
11月21日(水曜)
セッション3: ナノスケール・低次元系の構築と物性(座長:松田巌)
9:00 巨大Rashba効果と界面スピントロニクス 有賀哲也(京大院理)
9:30 ナノグラフェンの幾何学構造と特異な電子・磁気特性発現 榎敏明(東工大院理)
10:00 有機/金属界面の第一原理シミュレーション 森川良忠(阪大産研)
10:30 単分子化学反応 川合真紀(東大院新領域)
11:00 有機薄膜の構造・電子構造・電子物性 佐藤直樹(京大化研)
11:30 新奇ナノピーポットの創製と評価 篠原久典(名大院理)
12:00 昼食
セッション4: 光と物質のインタープレイ(座長:辛埴)
13:00 低次元原子構造の電子状態の3次元解析と立体原子顕微鏡 大門寛(奈良先端大)
13:30 25mアンジュレーター高輝度光源による時間分解軟X線分光の新展開 松田巌(東大物性研)
13:50 光と磁性の新規相関現象の創出 大越慎一(東大院理)
14:20 ナノ分光イメージング:金属ナノ構造における光電場分布と波動関数 岡本裕巳(分子研)
14:50 超高速非線形分光による吸着種の振動ダイナミクス 松本吉泰(京大院理)
15:20 極限コヒーレント光科学プロジェクト 末元徹(東大物性研)
15:40 休憩
特別講演(座長:上田寛)
15:50 分子性結晶研究の残照 井口洋夫(JAXA,東大名誉教授,分子研名誉教授)
16:30 物性化学コミュニティーと物性研 物性研所長
16:50 ポスターセッション(発表者は下記参照)
〜18:00
11月22日(木曜)
セッション5: ソフトマターにおける自己組織化(座長:山室修)
9:30 ゲル化の物理化学 柴山充弘(物性研)
9:50 ABCスターポリマーの構造構築−アルキメデスタイリングから準結晶へ 松下裕秀(名大院工)
10:20 紐を折りたたんでナノ秩序構造を創り出す:DNAの実験と理論による一般化 吉川研一(京大院理)
10:50 Field Theoretic Approach in the Theory of Polymeric Materials 土井正男(東大院工)
11:20 フォトニクスポリマーの基礎と機能創造 小池康博(慶応理工)
11:50昼食
セッション6: エキゾティックな物質の合成と物性(座長:森初果)
13:00 有機薄膜デバイスの光電流磁場効果の実験 田島裕之(東大物性研)
13:20 金属と有機物との連携が生み出すエキゾチックな分子性導体 加藤礼三(理研)
13:50 局在と非局在の狭間にみる分子スピン機能の新しい展開 阿波賀邦夫(名大院理)
14:20 結晶の“すきま”を利用する物質開発 山中昭司(広大院工)
14:50 固体ナノプロトニクス 北川宏(九大院理)
15:20 新奇な物性を示す酸化物の開発 上田寛(東大物性研)
15:40 おわりに 世話人
11月21日ポスターセッション発表者(短期研究会の期間中掲示: 大きさ=縦115cm・横85cm)
P1 内殻励起による有機薄膜の反応過程 和田 真一(広大院理&広大放射光センター)
P2 パイロクロア酸化物におけるラットリングフォノンと超伝導 山浦淳一(東大物性研)
P3 圧力下の、擬一次元伝導体バナジウム酸化物のもつ電荷自由度の多様性 山内徹(東大物性研)
P4 有機薄膜における配向状態と電流電圧特性との関係 小簑剛(東大物性研)
P5 分子性導体の光電子分光:EF近傍の電子状態 木須孝幸(東大物性研)
P6 遷移金属酸化物の新奇な相転移 礒部正彦(東大物性研)
P7 金属イオンを含むイオン液体の構造と物性 佐々木岳彦(東大新領域)
P8 粘弾性測定および光散乱法によるゲル化点決定 松永拓郎(東大物性研)
P9 Dielectric relaxation and dynamic light scattering study of DNA in aqueous solutions Shyamal Kumar Kundu(東大物性研)
P10 Computational electrochemistry:電気化学反応に対する新規第一原理アプローチ 館山佳尚(物材機構)
P11 更なる極低温・超高分解能を目指した新型レーザー光電子分光装置の開発 下志万貴博(東大物性研)
P12 Rh(111)表面での氷薄膜成長過程 紅谷篤史(東大物性研)
P13 クロムスピネルとその新奇な磁気特性 植田 浩明(東大物性研)
P14 超高真空・極低温・強磁場印加型独立駆動マルチプローブシステムの開発 宮田伸弘(東大物性研)
P15 Alナノクラスター表面相上のCoクラスターの原子・電子構造研究 成田尚司(東大物性研)
P16 スピンクロスオーバー錯体の薄膜作成 松田真生(東大物性研)
P17 スピンクロスオーバー伝導体におけるカップリングメカニズム 高橋一志(東大物性研)
P18 NaxCoO2におけるNa不定比性の精密制御 岡本佳比古(東大物性研)
P19 SnO2薄膜における紫外光照射効果 田久保直子(東大物性研)
P20 ルベアン酸銅錯体の水分子拡散とプロトン伝導機構 与那嶺亮(東大物性研)
P21 新規バナジウム酸化物V4O9の構造及び物性 山崎悟志(東大物性研)
P22 表面振動励起による非弾性光電子放出過程の観測 荒船竜一(東大新領域)
P23 高密度分子性ガラス 生成 緩和 仲山英之(学習院大理)
P24 弾性樹脂を用いた有機半導体単結晶/イオン液体界面の作製と電気二重層トランジスタ 平原律雄(阪大院理)
P25 イオン液体の融解・ガラス転移におけるイオンサイズ効果 守屋 映祐(東大物性研)
P26 イオンゲルPMMA/EMITFSIにおけるガラス転移とイオン拡散挙動 染谷武紀(東大物性研)
P27 ポルフィリン金属錯体を用いたEL素子のスペクトル変化 磯崎 晶(東大物性研)
P28 亜クロム酸水素結合系の赤外スペクトルにおける透過窓領域の解析 松尾隆祐(元 大阪大学大学院理学研究科)
P29 エチレン終端Si(100)基板におけるF4-TCNQの吸着状態:電荷移動とダイマー形成 向井孝三(東大物性研)
P30 高温超伝導μSQUID磁束計によるマイクロ結晶の磁化測定 武田啓司(東大物性研)
ポスター発表の募集(10/31締め切りました)
本研究会では,物性化学に関するポスター発表を募集します.ポスターセッションは11月21日の夕方に予定しておりますが,研究会の期間中掲示し,参加者の間で議論していただきたいと思います.ポスター発表(大きさ=縦115cm×横85cm)をご希望の方は,講演要旨(テンプレートを利用してください)および懇親会(11/20夕方)の出欠を吉信(アドレスは下記に記す)までお送りください.
なお,11月20日(火曜日)夕方に,懇親会を予定しております(会費:3000円).懇親会に参加の方は,準備の都合上,11月13日までに吉信までお知らせください.
連絡先:東京大学物性研究所 ナノスケール物性研究部門 吉信淳 (yoshinobu<atマーク>issp.u-tokyo.ac.jp)