ISSPワークショップ:水素と水の物性科学
日時:2008年2月4日(月)10:00〜18:00
場所:東京大学柏キャンパス 物性研究所 6階講義室 (本研究会は,公開・無料です)
水素や水分子は,地球を含めた宇宙にユビキタスに存在する原子・分子である.宇宙存在度がとびぬけて大きい水素は、固体中に容易に侵入して固体の構造や電子物性を大きく変化させる。古くから知られる金属の水素脆性や不純物水素による半導体の不活性化、近年発見された水素吸蔵に伴う金属-絶縁体転移はその顕著な例である。地球科学分野ではマグマにわずかにとけこんだ水素(水)が、マグマの物性を大きく変化させることが知られている。こういった物質中の水素は、原子核の質量が小さいために大きな振動エネルギーと核波動関数の広がりをもち、トンネル効果をはじめとしてさまざまな量子効果をもたらすことが知られている。
近年、中性子,放射光,レーザーなどを用いた新しい実験手法や計算機シミュレーション手法の発展により、水素や水分子を含む凝縮系の定量的な研究が格段に進展しつつあり,これまで各分野個別に進められてきた研究を分野横断的に見直すための基盤が整ってきた。物性研究所は,中性子・放射光・スーパーコンピューターなどの施設を有し,水素や水の関わる研究が共同利用研究者も含めて近年活発に行われている.
そこで本ワークショップでは、凝縮系における水素と水の科学を物性物理学の視点から議論し,実験と理論の現状を概観することにより、各分野での新たな展開と融合領域の開拓を目指す。
プログラム
2008年2月4日(月)
座長:福谷克之
10:00 はじめに(世話人)
10:05 固体内水素の量子効果ープロトンのトンネル運動と量子エンタングルメントー:杉本秀彦(中央大理工)
10:35 放射光で見る金属中の水素の状態:青木勝敏(原研機構-放射光)
11:05 金属における水素誘起欠陥とその効果:深井有(中央大理工)
11:35 第一原理計算による水素の物性:常行真司(東大院物)
昼食(12:05-13:00)
座長:杉野修
13:00 金属表面における水分子の吸着と成長ダイナミクス:吉信淳(東大物性研)
13:25 水分子ダイマーにおける水素結合交換反応の観測:奥山弘(京大院理)
13:55 低温氷表面反応:主に天文学的観点から:渡部直樹(北大低温研)
14:25 固体表面における水素に関する最近の話題−解離吸着,吸着構造,オルト-パラ転換など:福谷克之(東大生産研)
休憩(14:55~15:10)
座長:吉信淳
15:10 配位高分子における固体プロトニクス:北川宏(九大院理)
15:40 両親媒性高分子溶液・ゲルの圧力誘起相分離と疎水性相互作用:柴山充弘(物性研)
16:05 J-PARCと水素の科学:池田進(KEK)
16:35 電極表面上の水素と化学反応:杉野修(物性研)
17:00 軟X線発光分光による水の電子状態の研究:辛埴(物性研)
座長:常行真司
17:25 総合討論
18:00 おわりに
世話人:常行真司,福谷克之,柴山充弘,杉野修、辛埴 世話人代表:吉信淳(物性研 ナノスケール物性部門) (2008/1/25)
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